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就職ノウハウ

企業が求める「コスト意識のある人材」とはどんな人材か?

Q.【ブログ記事】企業が求める「コスト意識のある人材」とは?

A.

企業が採用を行う際に、しばしば気にするのが、「コスト意識」の有無です。実際、求人票内で求める人物像として「コスト意識のある人」という記述を行っている企業も少なくありません。本記事では、この「コスト意識」の正体を考察し、面接でどのように「コスト意識があること」をアピールすべきかを解説していきます。

 

 

そもそも、コスト意識とは何か?

先日、企業の採用担当者とお会いした際、「過去に採用した法科大学院修了生がコスト意識が全くなく、扱いに非常に困った」という趣旨のお話をされていました。法科大学院修了生に限りませんが、従業員の「コスト意識の欠如」が企業内で問題視されるケースは少なくありません。

では、「コスト意識」とは、具体的に何を指すのでしょうか?それは、

 

「目の前の事象に、どのようなコストが発生しているかを常に想像し意識すること」

 

だと考えています。

 

 

学生と社会人を隔てる「コスト意識」の有無

法科大学院修了生が多くの時間を過ごして来た、家族・友人・教師・教授等との関係内では、「コストを想像し意識する」場面というのは少なかったと思います。例えば、家庭内で朝ご飯を食べながら、「時給×××円相当のお母さんが0.5時間を投じて、×××円分の食材を使用した食事を、今、提供されている」と考えることもないと思いますし、友人に何かをお願いしたときに、「友人の時給を×××円と想定して、××××円分の業務を無償で委託している」などと意識することもないと思います。また、教師に質問をしながら、「自分は今、授業料を前払いした対価として、教育サービスを受けている」などと捉えている人も稀だと思います。

それは、家族・友人・教師・教授等との関係が、

 

・“経済的価値の交換”を前提としない人情の関係→家族・友人関係

・実際には“経済的価値の交換”を前提とした契約関係にあるものの、そうした関係が見えづらい関係→教師・教授との関係

 

に分類されるからだと考えられます。

一方で、社会に出ると、一転して、“経済的価値の交換”を前提とした契約関係に囲まれて過ごすことになります。わかりやすいところで言うと、例えば、法科大学院時代に気軽に質問に答えてくれていた弁護士の講師に、社会に出てから、ビジネスパーソンとして同様の質問を行い回答してもらうためには、1時間当たり数万円のタイムチャージがかかるなどの例が挙げられます。

それ以外でも、コンサルタント等の社外の人間に何かを相談する・上司や同僚に教えを乞う・部下に何かを命じる・会社のモノを使用する等、誰かに何かをお願いしたり、誰かのものを使用したりする場面では、必ず何かしらの契約関係が絡んでおり、最終的にはそのコストを企業が負担しています。

こうした状況下で、個々の従業員がコスト意識のない振る舞いを行ってしまうと、企業側が投じるコスト負担が増大し、個々の従業員が生み出せる利益(価値)以上の損失を生んでしまうおそれがあります。それが、企業が従業員にコスト意識を求める理由と言えます。

 

 

社会に出て働く以上、身の回りのものには全てコストが生じています。

オフィスの賃料やパソコン、ペン1本にいたるまでコストがかかっています。

だからこそ、働く側は会社がかけるコスト(給与)に見合った利益を

創出できているか、常に自らを振り返らなければいけません。

【出典】シゴ・ラボ(「コスト意識」をUPさせて、企業から求められる人材になろう!)

 

 

先の採用担当者の方のお話でも、

 

①他の法務部員がディスプレイに契約書を表示させて契約書審査を行っている中、「紙で見るのに慣れているから」という理由で、毎回、大量の契約書をプリントアウトしている。

→印刷代が余計にかかるのはもちろんのこと、ペーパーレス・エコの流れに反するし、紙に印刷することで紛失しやすくなり秘密情報漏洩のリスクを高めている

 

②上司や同僚の時間を奪っていることに無頓着で、自分で調べればわかること・目的から逆算して少し思考すればすぐにわかることを平気で質問し、周囲の人間の仕事の手を止めている。

→実質的に周囲の人間の業務量を増やし、その分だけ企業側が負担する人件費も増大する

 

③自分が具体的に何を知りたいのかを精査することなく顧問弁護士に仕事を丸投げしている(「この契約書の●条●項の適法性について教えてください」といった質問ではなく、「この契約書に問題がないか確認してください」と包括的な依頼を安易に行う)

→顧問料がとんでもない金額に跳ね上がる

 

といった点を問題視していました。

もちろん、成果を生み出すために、「社内外のリソース(ヒト・モノ・カネ・情報)=コスト」を適切に活用することは、むしろ求められるところですが、費やしたコストに見合った成果を生み出せないのであれば本末転倒です。そのため、生み出せる成果とコストのバランスの取れない人材に対しては、企業側も厳しい目を向けざるを得なくなります。

だからこそ、企業側は採用選考の段階から、「コスト意識のある人材」を求める傾向にあるのだと思います。

 

 

コスト意識のある人材になるには?

では、法科大学院修了生が「コスト意識」を身に付けるにはどうしたら良いのでしょうか?

正直、即効性のある方法というのはなく、基本的には、日々の意識付け・習慣化の問題になると考えています。具体的には、

 

①自分が生活をしていて、どんな金銭的コストが発生しているのか

②自分は、誰の時間をどれだけ奪っているのか

③それに対して、自分はふさわしい対価を支払っているのか


こういったことを常に考える癖を身に付けることです。これは即ち、周囲への「感謝の心」を持っているかどうかという話にも通じるかもしれません。

実際、コスト意識のある方は、総じて、謙虚で、感謝の気持ちを言葉にする機会が多いように感じます。そして、それが面接での好印象に繋がって行くのだと思います。

まずは、コスト意識を身に付けるために、周囲の人に対し、感謝の気持ちを声に出して伝えるところから始めてみてはいかがでしょうか。その上で、何かに取り組む際には、「いかに周囲の手を煩わせずに、最短時間で目の前の問題を解決するか」ということを追求する癖をつけるとよいと思います。

「コスト意識がある」という心証を与えられるか否かは、入社後の社内評価にも繋がっていくお話になりますので、ぜひ、今のうちから、良い癖をつけるようにしてみてください。

 

この記事を読まれた方は、ぜひ下記の記事も読んでみてください。

『企業が応募者に求める「素直さ」の正体』

『企業が応募者に主体性を求める理由』

 

 

【筆者プロフィール】
齊藤 源久

法科大学院修了後、大型WEBメディアを運営するIT企業にて法務責任者、事業統括マネージャーを担当した後、行政書士事務所を開設。ビジネス法務顧問として、数十社のベンチャー企業の契約法務や新規事業周りの法務相談を担う。

2014年より、株式会社More-Selectionsの専務取締役に就任。前職での採用責任者の経験・長年の法務経験・司法試験受験経験などを生かし、法科大学院修了生の就職エージェント業務、企業の法務部に派遣する法科大学院修了生向けの法務実務研修の開発・実施などを担当している。

 

 

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