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就職ノウハウ

企業が応募者に求める「素直さ」の正体

Q.【ブログ記事】企業が応募者に求める「素直さ」の正体

A.

企業の求人の「求める人物像」の欄を見たときに、かなりの確率で記載されているのが『素直な人』という人物条件です。そして、この『素直な人』という心証を築けるか否かが、法科大学院修了生の就職活動においても、その成否を大きく左右すると言っても過言ではありません。

本記事では、企業が求める「素直さ」が具体的に何を指すのか、なぜ企業で働く上で「素直さ」が重要になるのか等を考察し、法科大学院修了生が面接で「素直さ」をアピールするための対策について解説して行きます。

 

 

企業が求める「素直さ」とは何か?

小学校時代、朝の会で「すくすく伸びる素直な子」というフレーズを大声で唱和させられたことがありました。そのためか、私自身、「素直な子」と言われると、「学校の先生に気に入られる優等生」というイメージが根強くありました。はたして、企業が求める「素直さ」とは、言いつけをよく守る優等生をイメージしたものなのでしょうか?

「素直さ」については、人により様々な定義がなされていますが、以下がピンと来やすいと思いますので、ご紹介します。

 

 

素直さとは「あらゆる刺激を受け入れることができる力」であり、

その「あらゆる刺激」という点は、大きく分けると3つに分かれる。

①「環境や変化」

②「(自分とは異質な)他人や意見」

③「現実の自分」

 

出典:Jobweb(求める人物像として「素直さ」を定義するにはどう考えればよいのか?)

 

 

突き詰めますと、状況に応じて「自分を変えて行ける力」という言い方が出来ると思います。

「優等生」が管理コストを下げる(統制が取れやすい)という観点から学校の先生から好まれるのに対し、この「自分を変えて行ける力」は、“成長”という観点と結びつきやすい概念と言えます。

 

 

企業が「素直さ」を求める理由

では、なぜ企業は、「あらゆる刺激を受け入れることができる力」、「自分を変えて行ける力」を応募者に求めるのでしょうか。

一つ言えるのは、学生と企業人とでは、行動原則、評価基準、求められるスキル・知識等が大きく異なるということです。そのため、学生が企業に入社した場合、マインド・行動・価値観など、従来の自分から様々な面を変えて行かなければなりません。一方で、自分自身のあり方を“変える”というのは、誰にとっても大きなストレスのかかる行為です。そのため、

 

・環境やルールが変わっているのに、従来のやり方をひたすら振りかざす新人

・他人の意見に対し、その深意を汲もうともせず、すぐに噛みつき・反論し、受け入れようとしない新人

・現実の自分の立ち位置・能力・状況を受け入れられずに謙虚になれない新人

 

なども少なくありません。しかし、こうした新人は、ルール・評価軸を理解しようともせず、周囲の助言も受け入れられず、謙虚さに欠け周囲の応援・助力も期待できなくなるため、シンプルに、入社後に「成長しない」可能性が高いと言えます。

そして、それこそが、企業が応募者・新人に「素直さ」を求める大きな理由の一つなのだと思います。

 

実際、法科大学院修了生の就職支援を行っていても、セミナーを通じて応募書類作成の解説を受けただけで、すぐにそれを反映できる人もいれば、何回個人的に添削をしても、意を汲んだ修正ができない人もいます。弊社では多くの法科大学院修了生をインターン生として受け入れていますが、助言を受け入れて自分の行動をどんどん変えて行ける人もいれば、「気をつけます」、「やってみます」と返事をするだけで、実際に行動を変えるところまでには至らない人もたくさんいます。

それだけ、「自分を変えて行く」のが難しいということを示しているのだと思いますが、現実に、会社に貢献する戦力として大きく成長し、尚且つ周囲から「教えてあげたい」、「成長を応援したい」と思ってもらえるのは、言われたことをパッと吸収して自分をすぐに変えて行ける人なのだと思います。

 

こうした「素直さ」はともすると、“思考停止”、“ただのイエスマン”といったネガティブな概念と混同されがちではありますが、そこには大きな違いがあります。

 

 

反対意見があるのに言わない、といった意味ではなくて、相手の意図を正しく理解し、論理的に考えて間違っていないことがわかっていれば納得できるところで反発したりしない、という意味である。

こうやって書くと当たり前のことように感じられるけれど、「論理的で客観的な思考力及び理解力」がない人は、屁理屈を言って従わなかったり、的外れな批判をしたりする。そういうことをしないのが、素直なんだ、と。

 

出典:Books&Apps 素直さの本質は「従順である」ではなく「無駄な反発をしない」こと。

 

 

すなわち、「素直さ」を発揮する土台として、論理的思考力があるということになります。無思考に全てを従順に受け入れるのではなく、相手の発言や指導の深意を汲むべく、十分に思考力を発揮した上で、論理的に考えて間違っていないと感じたことはスッと受け入れる。論理的に考えておかしいと感じたら、自分が深意を汲めていないのではという立場に立ち、相手にその深意を確認する。このように、頭をフル回転させながら、出来る限りのものを相手から吸収しようという姿勢こそが、「素直さ」と言えるのだと思います。

 

 

企業の選考で「素直さ」をアピールする方法

それでは、企業の選考で「素直さ」をアピールするにはどうしたらよいのでしょうか。

まず、書類上、応募者ができるのは、「素直」という心証を採用担当者に抱かせるような具体的なエピソードを記載することだと思います。例えば、誰かの助言を受け入れながら、“出来なかったことが出来るようになった体験”などを披露できると、「素直」という心証形成に役立つと思います。

 

もちろん、そうしたエピソードを面接中に披露するのも有効です。また、面接での受け答えを通じて「素直さ」をアピールすることも可能です。その際見られるのが、“話を聞く姿勢”と“話の理解力”です。

相手が気持ちよく話せるような、心地よい相槌を打ちながら、相手の話に傾聴する姿勢を全身で示しつつ、相手の話を理解できたことを嫌味なく披露する(「~ということですね」etc.)。面接でこうした姿勢を示すことで、「素直」な印象を採用担当者に与えることが出来るのではないでしょうか。

 

 

終わりに

法科大学院修了生が企業に就職した場合、かなりの部分で自分自身を変えて行かなければなりません。これまで良しとされて来た、「質問への積極的な姿勢」が、かえって疎まれるものとなったり、これまで慣れ親しんだ文章の書き方・説明の仕方が、「専門用語ばかりで何を言っているかわからない」と苦言を呈されたりします。質を追求し独力解決にこだわる職人気質的な姿勢が、「相談もせずに仕事を抱え込む」「期限を守らない」というネガティブな評価に繋がることも珍しくありません。さらに、ビジネスメールの打ち方、電話の出方・掛け方、スケジュール管理のやり方など、右も左もわからない中から、それらを習得して行く必要があったりします。

法科大学院修了生の場合、学生期間が長い分、新卒の大学生よりもさらに、非企業文化がしみこんでいて、その分、企業に入社後に一層、急激な変化を求められる立場にあります。そのため、「素直」であることの重要性が、通常の新人以上に増すと言えます。

環境やルール・評価基準が変わったことを敏感に感じ取りながら、一旦、「何も知らず、何もできない自分」という謙虚な立ち位置から、周囲の声に真摯に耳を傾ける。こうした姿勢を就職活動段階から身に着け、企業に示して行くことが、皆さんの就職活動の成功率を上げることに繋がるのではないでしょうか。

 

 

 

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『面接突破に必要な傾聴力』

『企業が応募者に主体性を求める理由』

 

 

 

【筆者プロフィール】
齊藤 源久

法科大学院修了後、大型WEBメディアを運営するIT企業にて法務責任者、事業統括マネージャーを担当した後、行政書士事務所を開設。ビジネス法務顧問として、数十社のベンチャー企業の契約法務や新規事業周りの法務相談を担う。

2014年より、株式会社More-Selectionsの専務取締役に就任。前職での採用責任者の経験・長年の法務経験・司法試験受験経験などを生かし、法科大学院修了生の就職エージェント業務、企業の法務部に派遣する法科大学院修了生向けの法務実務研修の開発・実施などを担当している。

 

 

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