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就職ノウハウ

試用期間で切られる法科大学院修了生の特徴

Q.【ブログ記事】法科大学院修了生が試用期間で契約終了となる二大理由

A.

無事に就職を果たした後、一番最初の壁となるのが「試用期間」です。法科大学院修了生の試用期間は概ね3ヶ月~6ヶ月ほどとなることが多い印象ですが、残念ながら、稀にこの試用期間で契約終了となる方もおられます。本記事では、どういった特徴の方が試用期間で契約終了となるリスクが高まるのか、過去の事例をもとに解説して行きます。

 

 

1.教育コストが高過ぎる

法科大学院修了生が試用期間で契約終了となる際に、一番多い理由がこちらです。質問が多く、「一から十まで教えないと出来ない人材」、「教える負担が大きい人材」というネガティブな評価を下されてしまうケースになります。

 

■法科大学院修了生に「質問過多な人」が多い理由

法科大学院修了生に「質問過多な人」が多い理由はいくつか想定されます。

 

①学生期間の長さ

一つには学生期間の長さが挙げられます。学生時代は、授業料が前払いされ、その対価として教授が質問に回答するという図式があったと思います。そのため、質問を行うことは、授業料を支払った者の持つ当然の権利でした。そして、その権利をしっかりと行使する学生こそが“やる気のあるいい学生”という風潮がありました。

しかし、就職後は、「質問」をしている時間に対して、会社が給与を支払い、尚且つ、質問に答える同僚や上司に対しても給与を支払うという図式に様変わりします。

お金を払って質問していたところから、お金をもらいながら質問を行うという大きな図式の変化があったにも関わらず、学生時代と同じ感覚で質問を行い続ける法科大学院修了生は少なくないと感じています。

 

②試験慣れ

司法試験に限らず、「試験問題」を解く際には、問題を解くのに必要十分な情報が全て出揃った状態で問題に取り組むことが出来ます。一方で、仕事を進める際には、必要な情報が出揃った状態で仕事に取り組めるケースは、まずありません。限られた情報から、推論を働かせて仮説を立て、さらに仕事を進めて行く中で情報を加えて、判断材料として行く形がスタンダードになります。

試験問題を解くときのように、十分な情報が揃った状態で物事に取り組むことに慣れてしまいますと、十分な情報が揃っていないことに極度に不安を抱くようになります。こうした不安が、質問の多さを導く要因の一つになっていると考えています。

 

③アルバイト慣れ

アルバイトの際に「わからないことがあったら何でも聞いて」という指導を受けて来た方も少なくないと思います。そのため、なぜ、アルバイトだと質問が推奨され、就職すると質問過多が疎まれるのか疑問に思われる方もおられると思います。

各アルバイト先の事情もあるため、一概には言えませんが、一般論として、業務手順を正確に覚えることが「仕事の習得」となるような、いわゆる“正解のある仕事”をお任せする際には、業務手順に従った速く正確な業務遂行に価値がある仕事のため、どんどん質問するよう指導することが多いようです。一方で、コンサル業務や法務における判断業務のような「正解のない問いに答えを出す仕事」をお任せする際には、業務手順の正確な暗記だけでは仕事が成立しないため、判断する力を養うことを強く求められます。

アルバイトで取り組んで来た「業務手順を覚えることで出来る仕事」と法務として行う「判断力が求められる仕事」との切り替えが出来ていない点も、法科大学院修了生の質問が多くなる理由の一つかもしれません。

 

■質問過多がもたらす弊害

部下が上司に質問を行った場合、質問をされた上司は仕事の手を止めて質問に答えなくてはなりません。そして、上司が部下をマネジメントする時間が増えると、上司が別の仕事に投じるべき時間が奪われて行くことになるため、会社としての生産性が下がることになります。だから、企業はからまで教えないとできない人よりも、教えただけでを理解して、自走できる人を好む傾向にあります。

また、上述のように「判断力」を求められる仕事を行う上では、少ない情報を元に論理的思考力を発揮して答えを導き出す力が不可欠です。その観点でも、思考することなく思い付きでどんどん質問して来る人材は、結果として、「判断力」を培う機会をどんどん失う形になるため、その後の成長が見込みづらいとネガティブに評価されやすい傾向にあります。

 

■あるべき質問の方法

ここまで、質問が多すぎる人材は、どうしても疎まれる傾向にあるというお話をして来ました。しかし、そうは言っても「質問しなくてはどうにも仕事が前に進まない」というケースは有り得ると思います。では、そういった場面で、どのような形で質問を行えばよいのでしょうか。

 

まずは、質問自体がコストになる可能性を念頭に入れ、自分で調べてわかりそうなことは自分で調べるという姿勢が大切です。

また、「判断力」を培う機会の確保という観点で、調べてもわからない問いに対する質問を行う際は、少ない情報から論理的思考力を駆使して、自分なりの仮説を打ち立て、そうして下した自分自身の判断に対するフィードバックを求めるというスタンスで質問を行うとよいと思います。
(「自分はこれこれこういう理由で~と判断しましたが、こうした判断で問題ないでしょうか?」etc.)

こうした質問手法を採ることで、「判断力」を培う機会が確保されると共に、質問を受ける側の負担も減らすことが期待出来ます。

 

 

2.言われたことを直さない

試用期間で契約終了となる理由で2番目に多いのが、この「言われたことを直さない」というものです。例えば、書面を作成する際に、全角の数字と半角の数字を入り交ぜて使わないよう指示する企業は多いのですが、そうした何でもないようなことが、何度注意しても直らないケースなどです。

 

では、どうして、こうした方々は言われたことを直さないのでしょうか?

 

普段、多くの法科大学院修了生をインターンシップ生として受け入れて感じるところですが、「メモを取らない」方が相当数おります。指導された内容を、自分自身の記憶のみを頼りに刻み付けようというスタンスの方です。しかし、人間の記憶力には限界がありますし、仕事をしていると、あちこちから様々な情報が飛びこんで来ます。その結果、聞いた内容を何かの拍子に忘れてしまうことは少なくないと思います。その意味で、指導された内容を自分の頭以外の場所、すなわち、メモ帳やパソコン内・クラウド上などに置いておくことが重要になります。

 

また、仮にメモ等をしっかりと取っていた場合でも、指導された内容について、「気をつけよう」というだけの消化を行ってしまった場合には、いずれ何かの拍子に気をつけるのを忘れて、再び同じ過ちを行ってしまうことになります。

その意味では、指導を受けたことについては、単に「気をつけよう」では終わらせず、ご自身の『業務手順』の中に指導内容を落とし込むことが重要です。

業務手順を書き出した上で、指導内容を反映した業務工程を一つ増やし(全角・半角の混在の事例であれば、全ての数字を半角に一括返還する工程を入れるetc.)、当該手順を見ながら丁寧に仕事を進める。そうすることで、指導された内容を着実に遂行することが出来ると思います。

 

いかがでしたか。本日は、試用期間で契約終了となる法科大学院修了生の特徴と、その回避策について解説して来ました。せっかく就職を果たしたにも関わらず、試用期間を突破できないというのは、最大の悲劇だと思います。ぜひ、入社前の段階から、どのように振る舞えば、社内評価を高められるのかを認識し、普段の振る舞いから少しずつ意識してみてください。

 

 

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『企業が応募者に主体性を求める理由』

『試用期間解雇にあった後の就職活動』

 

 

 

 

【筆者プロフィール】
齊藤 源久

法科大学院修了後、大型WEBメディアを運営するIT企業にて法務責任者、事業統括マネージャーを担当した後、行政書士事務所を開設。ビジネス法務顧問として、数十社のベンチャー企業の契約法務や新規事業周りの法務相談を担う。

2014年より、株式会社More-Selectionsの専務取締役に就任。前職での採用責任者の経験・長年の法務経験・司法試験受験経験などを生かし、法科大学院修了生の就職エージェント業務、企業の法務部に派遣する法科大学院修了生向けの法務実務研修の開発・実施などを担当している。

 

 

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