会員登録

就職ノウハウ

終身雇用の終焉と法科大学院修了生の就職先選び

Q.【ブログ記事】終身雇用の終焉が就職活動に及ぼす影響

A.

2019年5月13日、トヨタ自動車の豊田章男社長は日本自動車工業会の会長会見にて、「なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と述べ、世間を驚かせました。その一週間前には、経団連の中西宏明会長が「制度疲労を起こしている。終身雇用を前提にすることが限界になっている」と同様の見解を示していたことから、いよいよ、終身雇用制度の終焉が迫っているという見方が有力となってきています。

かつては、終身雇用制度を前提に、会社の安定性・福利厚生の充実具合などにひたすら着目して、就職先を選ぶやり方が一般的でした。その終身雇用制度が終焉を迎える中、どのような基準で企業を選んでいけばよいのでしょうか。

 

 

終身雇用制度の維持が難しくなった理由

そもそも、なぜ、このタイミングで終身雇用が終焉を迎えるのかという疑問があると思います。様々な原因が複合的に重なった結果と言われていますが、主だったところでは以下が言われています。

 

①インターネット社会の到来で、多くの人が様々な情報にアクセスできるようになった結果、新規事業・新規商品がどんどん市場に出て来るようになり、事業のライフサイクルが短くなった→右肩上がりの安定経営が難しくなった

②少子高齢化に伴う労働人口の減少により、少ない人員で成果を上げる必要性が増した≒余剰人員を抱え続けられなくなった

③リストラ含む大胆なコスト圧縮を行う外国企業とのコスト競争が激化している

 

現在、正社員(期間の定めのない雇用契約を締結した社員)を解雇するには、厳格な要件を満たすことが求められていますが、今後は一定額の金銭の支払いを条件に解雇を認めるなど解雇規制の緩和の動きが出て来そうです。

 

 

このように、ビジネス環境・競争環境の変化により、終身雇用の維持は難しくなっている状況です。その一方で、受験期間が長く、これまで自分自身のキャリアと向き合う機会の少なかった法科大学院修了生の多くは、キャリアに関する情報がアップデートされておらず、親世代を通じて得た一昔前のキャリア観に基づいて、ご自身のキャリアを検討しています。その結果、

 

・終身雇用:定年まで雇うことを前提とした雇い方

・年功序列:役職や賃金を決める際に、勤続年数や年齢を重視する人事制度

 

を大前提として、「業績が安定していて就業環境が良さそうな会社でのんびり働きながら、少しずつ給料を増やし定年まで勤め上げたい」と考える方が少なくない状況です。

 

実際、かつては、就職活動は「就社活動」とも呼ばれ、多くのビジネスパーソンにおいて、『キャリア=一社目に入社した企業内での異動・出世』という図式が当てはまりました。そのため、会社の業績さえ安定していれば、年功序列型の給与体系のもと、定年まで会社が雇用と生活を守ってくれるという期待が持てました。しかし、上述のように現実問題として、終身雇用を維持する企業は一気に減少して行く見通しです。

それは、多くのビジネスパーソンが、キャリアのいずれかのタイミングで転職市場に出て転職活動を行わなければならなくなることを意味します。すなわち、これまで、社内評価だけを気にしていればよかったビジネスパーソンが、市場からの評価も意識してキャリアを歩む必要が出て来たということです。

 

 

大組織での社内評価と市場評価の違い

では、社内評価と市場評価の間にはどのような違いがあるのでしょうか。

社内評価については、各企業によって評価方法がまちまちな部分が大きいため一概には言えませんが、市場評価との乖離という観点では、一般的な大組織での社内評価の特徴に着目するとわかりやすいと思います。

 

 

大組織で社内評価を上げる要素

・組織人として社内ルール、社内慣行、過去の仕事のやり方、社内で確立された業務手順等に従って仕事ができるか

・社内の人間の専門分野に精通し、適切に活用できるか

・社内の有力者と人脈を築き、スムーズに活用できるか

 

 

 

 

市場評価を上げる要素

・幅広い業務の経験があるか

・大きな責任と裁量のもと、難易度の高い判断を行った経験があるか

・市場からのニーズが強い分野について専門的なスキルを有しているか

 

 

こうして見比べてみると、違いは顕著なのではないでしょうか。

 

終身雇用が維持されている現在でも、会社合併によりダブついた間接部門(法務含む)のスリム化を理由に法務部から違う部署に異動となってしまう事例、社内で与えるポジションがないために子会社に出向となり給与が大幅に下がってしまう事例などがあり、それらを契機に転職市場に出ることを余儀なくされている方が相当数おります。そして、そうした方々の大多数が、ご自身が思い描いていた自己評価と現実の市場評価とのギャップの大きさに苦しみ、希望する転職先を見つけられず、異動・出向を受け入れるという選択をしています。

 

終身雇用制度が終焉を迎えますと、同様に、期せずして転職市場に出ざるを得ないビジネスパーソンが急増することが予想されます。そうした時代では、市場からニーズが強い分野に常にアンテナを張りつつ、業務の幅自体をできる限り広げ、高度な判断業務を経験する機会を増やすことが重要になって来ます。

その意味で、これから就職活動を行う法科大学院修了生は、就職先で経験できる“業務の幅”、“早期に高度な判断業務を任せてもらえる環境か否か”の2点を特に重視して企業選びを行う必要があると言えます。

今後、応募先企業を選ぶ際のご参考にしていただけましたら幸いです。

 

 

この記事を読まれた方は、ぜひ下記の記事も読んでみてください。

『人気企業に入社したい法科大学院修了生』

『応募先企業の選定方法』

 

 

 

 

【筆者プロフィール】
齊藤 源久

法科大学院修了後、大型WEBメディアを運営するIT企業にて法務責任者、事業統括マネージャーを担当した後、行政書士事務所を開設。ビジネス法務顧問として、数十社のベンチャー企業の契約法務や新規事業周りの法務相談を担う。

2014年より、株式会社More-Selectionsの専務取締役に就任。前職での採用責任者の経験・長年の法務経験・司法試験受験経験などを生かし、法科大学院修了生の就職エージェント業務、企業の法務部に派遣する法科大学院修了生向けの法務実務研修の開発・実施などを担当している。

 

 

ページトップへ