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就職ノウハウ

就職活動で落ち込む法科大学院修了生に持って欲しい心構え

Q.【ブログ記事】就職活動のストレスを軽くする心構え

A.

多くの法科大学院修了生にとって、未知で不慣れな「就職活動」。特に、司法試験の不合格を契機に就職活動を始めた方にとっては、メンタル的に少なからず落ち込んだところから、何もかもが不慣れな就職活動に挑み、思ったように結果が出ず、さらに気持ちが沈んでしまうという方が少なくありません。本記事では、強いメンタルで就職活動を乗り越えるべく、法科大学院修了生が就職活動を行う上で持つべき『心構え』をご紹介します。

 

 

鉄則①:まずは、「自分が何を知らないかを知る」ことに徹する

学部新卒時に就職活動を行った経験が少ない法科大学院修了生にとって、応募書類の書き方・形式、選考の流れ、意識すべき就活マナー、面接での受け答えの方法など、就職活動は何もかもが未知の領域です。そして、そうした不慣れで未知な活動を行うことそれ自体が就活生にとって小さくないストレスになって行くと思います。

特に、法科大学院修了生の多くは「知らない」という状態を強く恐れる性質を有していると感じています。司法試験において、「知らない」ということは、危機的状況≒失敗に等しいととられる場面が多いためだと思います。実際、司法試験会場で「知らない」ことがあったら、苦難を伴う現場思考で対処するか、当てずっぽうで運に賭けるしかありません。

しかし、就職活動では、“自分が何を知らないか”がわかりさえすれば、目の前の便利なパソコンやスマートフォンを使ってインターネットで情報を検索することができます。キャリアカウンセラー等に聞くことだってできます。だから、何かを「知らない」ことは、司法試験のときほど、危機的な状況にはなりません。

就職活動のイロハがわからなくてストレスを感じたら、「“自分が何を知らないか”を特定し、一つ一つ調べて解決すればいい」という

おおらかなスタンスで就職活動に臨んでみたらよいと思います。

 

 

鉄則②:企業の選考は原則落ちるものと思う

司法試験に落ちる回数は、年間で最大1回のみですが、就職活動では「応募企業総数-内定獲得企業数」だけ落ちることになります。すなわち、内定をもらえた企業以外からは全て落とされるということになります。

そして、例えば、27、8歳の職歴のない法科大学院修了生が企業の法務職での就職を目指す場合、ポテンシャル採用枠・経験者枠の区別なく闇雲に応募した場合の平均的な内定獲得モデルが“100社応募の1社内定”、ポテンシャル採用枠に絞って応募を行った場合で“5~15社応募の1社内定”といったモデルになります。つまり、選考通過率の高い求人に厳選して応募できる恵まれた環境下でも、10社前後は落選となる計算になります。

その1社1社の落選を、司法試験不合格と同じようなテンションで受け止めた場合、とてもじゃありませんが、心が耐えられないと思います。

一方で、普段法科大学院修了生の方とお話をしていると、意外なことに、内定獲得に対し、とてもポジティブな方が珍しくありません。すなわち、応募する前から・面接を受ける前から、内定を獲得したときの心配をする方が少なくないのです。自分自身の人生に対しポジティブなスタンスで臨むことは素晴らしいことですが、頭の中での選考通過率と現実の選考通過率とのギャップが大きいほど、心が受けるダメージは大きなものとなってしまうと思います。

その意味で、「企業の選考は原則落ちるもの」というくらいのスタンスで選考に臨む方が、落ち込みの防止という観点から有益だと思います。

 

 

鉄則③:優秀でも落ちることはある

司法試験は、答案上、優秀な結果を残せさえすれば、落ちることはない試験だと言えます。

一方で、企業の選考では“変数”が多く、優秀だという印象を残せた方・筆記試験等で優秀な結果を残した方でも落選となるケースは珍しくありません。実際、とても優秀な方でも、応募のタイミングとその時の他の応募者の数・強弱、前任者との比較、上司となる方との年齢バランス、応募先企業の社内事情、応募先企業が選考上重視しているポイント、上司・同僚との相性、応募先企業の受け入れ体制等を理由に落選となるケースは少なくありません。

その意味で、就職活動は、絶対評価による純粋な順位づけに挑む選考ではなく、「インプレッション(瞬間的な心証)」と「縁」の要素が大きい、ある種アバウトな選考だと言えます。

就職活動で落選が続くと、自分自身が価値のない人間だと言われているようで落ち込んでしまうところがあると思いますが、上述のように、就職活動は、皆さんの本質的な価値を絶対的に評価するものではありません。

もちろん、一つ一つの落選から何かを学び取ることは大切ですが、うまく行かなった選考を「縁」の問題として、自分自身の価値・評価と切り離して割り切ることも重要になって来ます。

 

 

鉄則④:「これまでの自分」だけで勝負しようとしない

普段、就職活動が長期化している方の応募書類を見ていますと、就職活動開始時から経歴・書面の内容等が全く変わっていない方が少なくありません。それは、“就職活動を開始した時点での自分”だけで、勝負に挑んでいるということだと思います。

ただ、そうしたスタンスで就職活動を行った場合、うまく行かないときの閉そく感・硬直感は、人一倍大きなものになってしまうと感じています。“これまでの自分”のまま選考が通る選択肢はどれなのかという視点で企業選びを行わなければならなくなりますし、結果が出ないときに打てる手も限定的になってしまいます。

逆に、就職活動中に書けるアルバイトが増えたり、資格の取得、TOEICの点数の向上などを図っている方、応募書類に載せる文章の試行錯誤を繰り返している方などは、良いメンタルで就職活動に臨めている方が多く、実際に内定獲得までの期間も短い印象を受けています。企業がポテンシャル採用枠で採用する人材に「成長への期待値」を求めている以上、就職活動中に実際に、変化・成長できる人材の方が、企業が求める人材像に近いと評価されやすいからだと思います。

だから、就職活動を行う上では、“これまでの自分”だけで勝負しようとせず、“現在進行形で変化していく自分”で勝負するという意識で、変化を楽しみながら臨むのが有効だと思います。

 

 

鉄則⑤:自分の内側に「評価の物差し」を持つ

就職活動のゴールを「内定を獲得すること」と定義した場合、就職活動の成否の評価の物差しが外側、すなわち応募先企業に置かれることになるため、内定を獲得しない限り、自分の就職活動がちっとも前に進んでいないような感覚に陥りがちです。そうなりますと、「頑張っても頑張っても、ちっとも報われず終わりが見えない」というネガティブな思いに囚われ、メンタル面が落ち込んでしまうおそれがあります。誰かに承認されることを目的に据えてしまった場合、その欲求は、誰かに承認されることでしか満たされることはないからです。

逆に、就職活動のゴールを、自分の内側にある「評価の物差し」と絡めて定義づけることが出来た法科大学院修了生は、企業から通知される選考結果に関わらず、自分なりに成長を実感し、良い精神状態で前向きに就職活動に臨める傾向があります。

 

過去の登録者の方の中には、就職活動のゴールを『仕事のできるビジネスパーソンとしての土台を作り上げること』と定義した方がおりました。その方は、応募書類の作成にあたっては、「スピーディーに書類を仕上げるスキルを身に着けたい」、面接に臨むにあたっては、「自分の考えをわかりやすくプレゼンするスキルを身に着けたい」、「苦しい局面でも、とっさに対応する対応力を身に着けたい」といった具合に、自分自身が設定したゴールである「仕事のできるビジネスパーソン」と今の自分との違いを常に意識しながら、就職活動の各局面を、そうした“違いを埋める場”と捉え、日々、自己研鑽に努めていました。

こうした取り組みは、上述のように、企業がポテンシャル人材に求める「成長への期待値」という観点からも、好ましい取り組みだと思いますし、何よりも、評価の物差しが自分の内側にあることで、内定を獲得できない時期にあっても、一歩一歩、自分の設定したゴールに近づいているという実感を持てる点が、メンタルを安定的に保つ上で非常に有効だと思います。

 

「就職活動を終えるときに自分自身どうなっていたいのか?」

 

ぜひ、この質問をご自身に投げかけた上で、ご自身なりの“就職活動のゴール”を定義してみてください。

 

 

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『法科大学院修了生は就職できるか?』

『面接で自信を示すために「正真正銘のプライド」を持とう』

 

 

 

【筆者プロフィール】
齊藤 源久

法科大学院修了後、大型WEBメディアを運営するIT企業にて法務責任者、事業統括マネージャーを担当した後、行政書士事務所を開設。ビジネス法務顧問として、数十社のベンチャー企業の契約法務や新規事業周りの法務相談を担う。

2014年より、株式会社More-Selectionsの専務取締役に就任。前職での採用責任者の経験・長年の法務経験・司法試験受験経験などを生かし、法科大学院修了生の就職エージェント業務、企業の法務部に派遣する法科大学院修了生向けの法務実務研修の開発・実施などを担当している。

 

 

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