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企業法務とは

コンプライアンス対応とは?

コンプライアンス対応の業務内容と着眼点  ~法務のイメージを掴む~

契約法務や株主総会対応については、法科大学院の勉強の中で近しいものに触れるため、何となくのイメージを持つことは難しくないかもしれません。しかし、コンプライアンス対応については、具体的な仕事内容を思い浮かべることができる法科大学院修了生は少ないのではないでしょうか。もっとも、コンプライアンス対応は法務担当者のメイン業務の一つであり、そのイメージを明確にしておくことは、法務担当者としてのキャリアビジョンを描く上でも、「法務担当者になりたい」という想いを説得力を持って面接官に伝える上でも、とても重要になります。以下、コンプライアンス違反となる具体的事例を取り扱いながら説明していきます。

 

 

1 コンプライアンスとは何か

コンプライアンスとは、法令遵守または規範遵守のことをいいます。ここで遵守すべき規範には①法令②就業規則⓷社会的な倫理規範等が挙げられます。企業は、コンプライアンスにより、対外的な信用を高め、企業価値を向上させることが出来ます。https://www.daiichihoki.co.jp/store/upload/pdf/027920_pub.pdf
その一方で、企業がコンプライアン違反を起こした場合、会社の信用が下がり、会社の売上減、採用難、離職率の増加等に繋がるおそれがあります。そのため、法務担当者としては、自社のコンプライアンス違反を予防する体制作りを行う必要があります。

 

企業でコンプライアンス違反が発生するケースでは、➊社員が法令・規範の内容を認識していないパターン、➋社員が法令・規範の内容を認識しているもののそれに違反することの重大さを認識していないパターン、➌法令・規範の内容を認識し、それに違反することの重大さも認識しているものの、他に優先するものがあるために守らないパターンの3パターンに分かれます。

そのため、法務担当者としては、

 

・自社の人間に対し、法令や規範の内容を認識させる

・法令・規範違反の際のリスクの重みを認識させる

・法令・規範遵守のモチベーションを上げる

 

といった対応を行う必要があります。これらがコンプライアンス対応業務の骨組みとなります。

 

 

2 コンプライアンス違反の具体的事例

(1) 従業員がコンプライアンス違反を犯す場合

従業員がコンプライアンス違反を犯した具体的事例としては、吉本興業の芸人による闇営業の事例があります。この事案では、吉本興業の所属芸人数名が事務所の許可を得ずに、反社会的勢力のパーティーに出席したことが問題となり、当該芸人らを謹慎処分にしたというものです。本事件におけるコンプライアンス違反の背景には、普段お世話になっている先輩等からの誘いを断れなかった、反社会的勢力への闇営業で稼ぎを増やせるという心理が働いているものと思われます。その意味で、上記3つのパターンの中では、法令・規範の内容を認識しているものの、➋それに違反することの重大さを認識していないパターン又は➌それに違反することの重大さも認識しているものの、他に優先するものがあるために守らないパターンのいずれかに該当すると言えます。

 

コンプライアンスは、従業員一人一人が会社の代表であるとの自覚をもって、従業員各自において実現する必要があります。しかし、現場の従業員の多くは法令や企業倫理などの遵守は面倒くさいものとして認識しているのが実状です。現場で誰も咎めないようなルールの遵守よりも、現場での暗黙の了解の遵守や自身の利益を優先する結果、コンプライアンス違反が生じる可能性が高まります。

そこで、従業員によるコンプライアンス違反を予防するために、法務担当者は従業員に対し、法令や企業倫理に違反した場合のリスクの大きさを伝えつつ、コンプライアンスへのモチベーションを高めなければなりません。そのための手段としてコンプライアンス研修やコンプライアンスルールの策定などがあります。

 

■コンプライアンス研修

具体的には、各従業員に配布する資料の作成や講義などを行います。資料の作成や講義をするに当たっては、単に法令の羅列に終始してはなりません。最終的には、従業員各自に自覚を持ってもらえるようにするのが目的ですので、従業員が興味を持って聞いてくれるような講義がカギとなります。そこで、過去のコンプライアンス違反の具体的事例を扱ったケーススタディ形式などがお薦めです。例えば、広告代理店などが広告を作成する際に景品表示法違反となる場合があります。講義において、過去に景品表示法違反となった具体的事例を紹介し、どのような広告なら違反とならないかなどを現場の従業員とディスカッションすると有効だと思われます。

 

■コンプライアンスルールの策定

飴と鞭の“鞭”によりコンプライアンスへのモチベーションを高めるという観点では、コンプライアンス違反を犯した場合の懲罰ルールを明確にするのも有効です。コンプライアンス違反により自身が被る不利益が明確になれば、自身の利益や先輩等との暗黙の了解の遵守よりもコンプライアンスを優先させるモチベーションとなり得るからです。例えば、先ほどの吉本興業の事案では、対象の芸人を謹慎処分とし、首謀した芸人を解雇処分としました。「〇〇〇した時には」、解雇とする、減俸処分とする、などの懲罰ルールを定めておけば、従業員も危機感を抱くことになり、法令違反を予防する一助となると思われます。また、“飴”を与えてコンプライアンスへのモチベーションを高めるという観点からは、コンプライアンスのために好ましい行動をとった従業員の人事評価を高めるような人事評価制度を人事と連携しながら設計するという手法もあります。

 

(2) 経営陣が関与するケース

経営陣がコンプライアンス違反に関与する場合としては、粉飾決算の事例などが挙げられます。このような粉飾決算の原因としては、会社の業績が下がっていることが露見すると、株価が下がり会社としての信用が低下する、株主からの信用が下がり経営陣の責任が追及されるなどするため、これを隠蔽しようとする心理にあると考えられます。

上記3つのパターンの中では、➌法令・規範の内容を認識しそれに違反することの重大さも認識しているものの、他に優先するものがあるために守らないパターンに該当することが多いのではないでしょうか。これを予防するためには、やはり、経営陣のコンプライアンスへのモチベーションを高めることが重要です。

そのために、経営陣向けのコンプライアンス研修を実施する、コンプライアンスルールに落とし込むという手法が考えられますが、これらに加えて、経営陣のコンプライアンスのチェック体制を整備するのも有効です。

会社が粉飾決算を行う場合、通常は経理部の記入した帳簿と会社が株主総会等で公表しようとする帳簿が食い違っていることが考えられます。こうしたケースを捕捉すべく、現場の経理部員からの報告を可能とする内部通報制度を構築しておくと良いでしょう。内部通報制度とは社員・職員などが、法令違反、規則違反や不正行為や疑問などを組織内部の窓口に対して、匿名または実名で相談・通報することをいいます。内部通報制度が有効に機能するためには、どこに通報するべきか窓口が明確でなければなりません。また、内部通報においては、通報したことにより不利益を受けることを防ぐため、匿名性が確保されなければなりません。したがって、内部通報を扱う部署を設ける場合には、匿名のメールフォームを設けたり、相談スペースを個別に設ける等プライバシーに配慮した制度作りが必須となります。そして、コンプライアンス対応者は通報を受けた場合、対象部署にヒアリングを行ったり、必要書類の提出を求める等して事態の把握を進めていきます。コンプライアンス違反の事実があると発覚した場合には、取締役会や監査役に報告します。

 

 

3 まとめ

以上のように、コンプライアンス対応の仕事内容は、教育・研修、調査、社内規定の明確化など多岐に渡りますが、より平易な言い方をすると当たり前のことを当たり前に実践することの徹底と言えます。

コンプライアンス対応では、刑法、会社法などの司法試験で扱った科目に加え、独占禁止法や景品表示法などの取締規定も多く扱うため、法科大学院修了生にとっては未知な部分が多い仕事と言えます。また、業界毎に取り扱う法領域が異なってくるため、自分なりに追究していけば専門性の高いスキルを手に入れることができるでしょう。

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