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企業法務とは

訴訟対応とは?

訴訟対応の業務内容と着眼点  ~法務のイメージを掴む~

法科大学院修了生の就職先として人気の法務職。その法務職の求人票を見ていると、「訴訟対応」という文字を目にすることが多々あると思います。法科大学院では、弁護士として訴訟にどのように関わるかを学習して来たため、弁護士としての訴訟対応のイメージを描ける法科大学院修了生は少なくないと思いますが、はたして、法務担当者はどのように訴訟に関わって行くのでしょうか。本記事では、この法務担当者による「訴訟対応」について解説して行きます。

 

1.企業と弁護士との架け橋

 訴訟対応は、自社と取引先企業、自社商品の取引先、国等との間で生じた紛争を処理する法務部の業務内容となります。

 訴訟対応と聞いたときに、法科大学院修了生の多くは、弁護士が法廷内で行うような活動を思い浮かべると思いますが、仮に外部の弁護士に依頼せず、自社だけで訴訟を完結しようと考えた場合、法廷に出ることができるのは、原則、代表取締役(会社法349条4項)になります。一社員である法務担当者には、法人たる企業の代理人としての資格がなく、裁判上の行為をする法律上の権限もないため、法務担当者自ら法廷に立ち、弁護士のように訴訟対応を行う場面は原則としてありません。具体的に訴訟手続きを行うのは、企業と委任契約を結んだ代理人たる弁護士ということになります。

 しかし、弁護士に訴訟を依頼するときに、弁護士に企業の状況や訴訟方針を正確に伝えられなければ、企業にとって満足のいく解決を得ることはできません。そこで、法務担当者が、訴訟対応業務を通じて、企業と弁護士を繋ぐ架け橋として両者のやり取りを仲介し、法廷の外で企業のために紛争を解決を図る役割を担うわけです。

 以下で、具体的な内容を紹介します。法務担当者として働くイメージの参考になれば幸いです。

 

 

2.弁護士の頼れるパートナー

 訴訟において主張が対立する場合、裁判所は証拠に基づいて判断しなければなりません。しかし、実際に訴訟を行う弁護士一人で企業に有利となる証拠を集めることは非常に困難です。

 法務担当者は企業の敗訴を防ぐため、契約書や紛争に関わった社員とのやり取りを通じて証拠を収集する役目を担っています。また、訴状や答弁書等、訴訟には様々な書類の提出が求められますが、法務担当者は企業の意思を正確に書面に示すため、弁護士と協力して訴訟に関する書類を作成することが求められます

(参考:http://legal-seminar.com/12-08.html 「法務部の仕事と役割8 訴訟対応」)

 このように、法務担当者は訴訟を担当する弁護士のパートナーとして、訴訟の準備や整理を行う役割があります。役割を果たすため、法務担当者には弁護士や社員との円滑なコミュニケーションを取ることが求められます。

 

 

3.企業の窓口であり、法の通訳

 訴訟を委任した弁護士は、あくまでも外部の人間ですし、他の企業・クライアントの案件も多数抱えているため、企業の内部事情に精通する上で、限界があります。その結果、企業の要望と弁護士の訴訟方針にズレが生じる可能性があります。法務担当者は、企業の内部の人間として自社がどのような解決を求めているかを弁護士に伝え、会社と弁護士が共通の訴訟方針を持つよう働きかける役割を担います。

 一方で、訴訟は刻一刻と状況が変化するものであり、自社が訴訟の進展状況を正確に把握することが困難な場合があります。法務担当者は、社内で法に精通している者として、訴訟状況や争点等を的確に把握・報告し、社内の共同認識とする、どのような訴訟展開をすべきか判断を仰ぐ等、自社の意思決定を促す役割があります。

 この点からも、法務担当者には外部弁護士や社内の最終意思決定機関である経営陣との密なコミュニケーションが必要となります。

 

 

4.次の紛争防止につなげる

 無事紛争が解決した後においても、法務担当者の役割は終わりません。今回発生した紛争を反省し、以後、同種の紛争が起きないように対策をすることも訴訟対応として重要な業務となります。例えば、契約書を巡る紛争の場合、以下の予防策が挙げられます。

 

①契約書に記載のない事項を巡る争いが生じた場合は、契約書に明記をする

②契約書の曖昧な記載事項を巡って紛争が生じた場合は、該当箇所の文言を明確にする、または一義的な解釈となる記載にする

③契約条項の有効性が争われた場合は、別の条項に書き換える

(参照:https://how2-inc.com/troubleshooting-8515#2-2

    臨床法務とは何か?法務問題や紛争、クレーム処理など一般的な対応内容を解説)

 

 現在では、訴訟のもたらす金銭的・時間的・精神的損害の大きさから、紛争を事前に予防する「予防法務」が重要視されています。予防法務に活かすこのような業務も訴訟対応を担当する法務担当者の重要な役割と言えます。

 

 

5.まとめ

 訴訟対応における法務担当者の役割を紹介しました。訴訟の花形と言える「法廷活動」以外でも、法務担当者として企業を守る手段は多くあると言えます。

 紛争が生じた際、訴訟を提起するのか、調停で解決を図るのか、訴訟中であっても和解で解決できないか判断するなど、法務担当者は紛争を前にしたときの一次的判断を委ねられています。また、紛争には、火事と同じで放っておけば刻一刻と深刻になっていく性質があるため、争点となる事実を的確に把握して証拠を固める、今後の展開を予想して予め紛争の相手方と和解に向けたコンタクトを取るなど、迅速な対応が求められます。そのため、上述したように、法務担当者にとって社内の人間・外部弁護士・相手方当事者と密にコミュニケーションを取ることが重要になります。

 紛争解決に当たって多方面の人と関われる、自分の判断が紛争解決に大きく影響する点で、訴訟対応を担う法務担当者は、弁護士とは異なったやりがいを持って仕事をすることができるのではないでしょうか。

 

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