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企業法務とは

株主総会対応とは?

株主総会対応の業務内容と着眼点 ~法務のイメージを掴む~

■はじめに

法科大学院修了生の就職先として人気の法務職。その法務職の中でメイン業務に数えられることの多い業務として、「株主総会対応」が挙げられます。特に、近年の株主総会は、形式だけの株主総会という従前の態様ではなくなってきていることから、法務業務として求められることが多くなっています。そのため、株主総会対応の経験を有していることが、法務人材としての市場価値の向上にも繋がっています。

その意味で、「株主総会対応」について、具体的なイメージを持つことは、就職活動中の法科大学院修了生が法務としてのキャリアビジョンを描く上でも重要になって来ていると言えます。本記事では、この「株主総会対応」について掘り下げて行きます。

 

■総会対応とは

株主総会対応は、法務業務として求められる業務の一つです。
個人株主の増加などの要因により、株主総会の迅速適正な株主総会の運営は、上場企業では特に重要な課題となっているといえます。
具体的な内容は、会社法等の法令違反にならないように議案・日程・招集通知などの用意、株主総会当日を想定したシナリオ・想定問答集の作成、株主総会後の議事録作成や登記手続などがあります。

 

■具体的な業務内容

(1) 招集通知関連
日時・場所・目的事項・投票方法等、会社法298条及び会社法施行規則63条で規定されている事項を記載しなければなりません。事業報告、株主総会参考書類も必要になります。
具体的には、本文に発信日付・招集者等を、なお書きに欠席株主の議決権行使方法を、追記に日時・場所等をまとめて記載します。
(参照:https://www.kabukon.tokyo/activity/data/seminar/seminar_2018_03.pdf 株主総会招集通知、事業報告作成上の留意点 – 東京株式懇話会)

 

招集通知の期限については、公開会社では2週間までに、非公開会社(すべての株式に譲渡制限をつけている株式会社)では1週間までに通知を発送しなければなりません(会社法299条)。

つまり、公開会社では株主総会開催日の15日前、非公開会社では株主総会開催日の8日前が発送期限です。

 

(2) シナリオ・想定問答集の作成

議事進行、株主による質問を想定して、株主総会当日に備えます。
おおまかなシナリオとしては、議長就任、事業報告、計算書類報告、監査報告、質疑応答、採決が考えられます。
どのような進行になるかをみて、かかる時間を想定してシナリオを作る必要がありそうです。
(参照:https://resonacollaborare.com/compliance/18042502/ 2019 中小企業の株主総会 「開催当日の運営」)

 

想定問答集は、株主が関心を持ちそうなところを予想して作ることになります。
例えば、前年と比べた設備投資費の上昇や収益の減少等、予算や決算にかかる事項に対する原因の説明や、他社が実施したり世間が注目している事業展開についての自社の展望などが挙げられます。
想定問答集は、多くの会社が毎年作成している関係で、インターネット上でその年に対応するサンプルを見つけることができますので、参考にするとよいでしょう。
(参照:http://www.responseability.jp/pj/gmos 株主総会 非財務情報に関しての問答集)

 

(3) 議事録作成、登記手続

議事録には、開催日時場所、議事の経過の要領結果、意見発言の内容、出席した取締役等の氏名名称、議長の氏名、議事録作成に係る職務を行った取締役の氏名を記載する必要があります(会社法318条1項、会社法施行規則72条)。
作成期限は法定されていませんが、できるだけ早く作成するのが望ましいと言えます。
また、形式も自由ですが、定款で署名義務者を定め、署名押印を要求すれば、改ざん防止を図ることができます。
株主総会議事録のひな形は、様々な形式がインターネット上で配布されているので、検索してみてイメージを膨らませておくことも有効です。
(参照:https://www.jusnet.co.jp/business/gijiroku/a1_3.shtml 株主総会議事録の一般的モデル文例(中小企業))

 

機関設計の多様化を受けて、登記事項が増えています。
具体的には、取締役・監査役の変更、会計監査人の再任登記、会計参与・会計監査人の新規登記、代表取締役の変更登記が挙げられます。
(参照:https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/sl_info/view_point/pdf/sodan071105_4.pdf 定時株主総会後の事務 (議事録、登記、公告) – みずほ総合研究所)
申請書は法務局からダウンロードできます。
(参照:http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001249323.pdf 株式会社変更登記申請書 – 法務局 – 法務省)

 

■株主総会を取り巻く環境の変化

(1) コーポレートガバナンス・コード
かつての株主総会対応といえば、主には総会屋対策のことでした。
そこでは、総会屋による議事進行の妨げを防止するため、いかに株主の質問を打ち切り、素早い議事進行及び採決に至るかが重要でした。
そして、実際の対策として、議長が質問数を制限して議決を行うことも少なくありませんでした。
その結果として、会社の最高意思決定機関である株主総会が形骸化してしまう現象に陥ってしまっていました。
このことの反省から、日本取引所グループから「コーポレートガバナンス・コード」が公表されました。その中では、適切な情報開示と透明性の確保や株主との対話といった原則が掲げられています。
(参照:https://www.jpx.co.jp/news/1020/20180601.html コーポレートガバナンス・コードの公表)

 

そして、コーポレートガバナンス・コードへの対応状況は、2018年12月現在で3,621社と多く、1年前と比べて約100社増えています。
(参照:https://www.fsa.go.jp/singi/follow-up/siryou/20190128/01.pdf コーポレートガバナンス・コードへの対応状況)
コーポレートガバナンス・コードへの対応が増加傾向にあることから、株主からの情報開示や対話への期待も増していくと考えられ、これに即した対応が必要になっていきます。

 

(2) 個人株主の増加

どのような株主総会対応をすべきかについては、構成員株主によって大きく変わりうるため、昨今の株主構成を知ることが重要です。株式分布状況を見てみると、個人株主が増加しており、ついに個人株主が五千万人を超える事態となっています。
(参照:https://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/examination/nlsgeu0000036n2d-att/j-bunpu2017.pdf 2017年度株式分布状況調査の調査結果について)

単に個人株主の数が増加しているだけでなく、株主総会に参加して実際に発言する個人株主が増えていることから、質問等の増加が見込まれます。

 

(3) スチュワードシップ・コード

金融機関による投資先企業の経営監視など企業統治への取り組みが不十分であったことが、リーマン・ショックによる金融危機を深刻化させたとの反省に立ち、スチュワードシップ・コードが導入されるようになりました。
日本では、金融庁によって策定されています。
(参照:https://www.fsa.go.jp/news/29/singi/20170529.html 「責任ある機関投資家」の諸原則≪日本版スチュワードシップ・コード≫(改訂版)の確定について)
保険会社、銀行、信用金庫などの機関投資家は未だ株主比率の多くを占めています。
スチュワードシップ・コードの導入により、機関投資家は積極的に質問をする等をする責務を負うことになるため、機関投資家からの質問も増加すると見込まれます。

 

■新時代の株主総会対応のための準備とは

以上の環境の変化から、株主総会での発言が従前に比べ増えることが予想されます。
会社は、株主の質問に適切に対応するために、特に以下のような準備が必要となります。
① 株主に対する情報開示のための資料作り

適切な資料を用意することで、株主の質問を減らし迅速な議事進行を図ることができます。
そのためには、株主の興味関心を予想し、適切な資料を提示することが必要です。
株主の興味の中心は利益にあるので、前年比との比較が容易な会計資料や、前年と異なる結果となった原因の記載などを豊富にすると株主の満足度を高められるようです。

 

② 想定される質問に対する答えの用意

素早く回答することで、株主からの質問に対応する時間を短縮できます。
そのためには、株主総会における頻度の高い質問や、提示する資料を見たときにどのような質問をしたくなるかを想定し、事前に回答を用意することが必要です。
株主の質問は、会社が公表した会計資料からなされることが多いため、利害関係に関する事項や他社との比較を考慮した将来の展望についての回答を用意する必要がありそうです。

 

③ リハーサルの実行

具体的な進行をすることで、円滑な議事進行をすることができます。
そのためには、スケジュールを想定して実際に質問対応等にどれほど時間が掛かるかなどを知っておく必要があります。
また、災害の発生等の想定外の事態に対する対応も考えておくことが推奨されます。
(参照:https://www.kigyou-houmu.com/shareholders-1/ 企業法務オンライン、株主総会の一般的対策)
(参照:https://www.sp-network.co.jp/column-report/spneye/candr20022.html 株式会社エス・ピー・ネットワーク 解説!新任担当者のためこれからの株主総会対策~第2回~(2018.3))

 

■終わりに

コーポレートガバナンス・コードの公表や、株主総会で積極的に行動する株主の増加により、適切な情報開示等を通して株主との対話を図っていくことが、新時代における株主総会対応として求められそうです。

そのため、法務担当者としては、いかに株主の質問を想定して、資料や問答集の作成、議事進行のリハーサルを準備が出来るかがポイントになります。自社の事業や経営状況を理解する力が重要となって来そうです。

 

 

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