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就職ノウハウ

法科大学院修了生が面接に向けて行うべき準備

Q.これから就職活動を始めますが、面接が不安です。どのような対策を取ればよいでしょうか。

A.

内定を獲得する上で、面接前の準備はとても重要になります。その一方で、就職活動に不慣れな法科大学院修了生の大多数は、面接が何のために行われ、そのためにどのような準備が必要なのかを把握していません。本記事では、法科大学院修了生が面接当日までに行うべき準備を解説します。

 

 

面接では何を選考されるのか?

まず、面接では、採用担当者から何を選考されることになるのでしょうか。大きく分けて、以下の4つが評価されることになります。

 

 

◆キャリアの軸

◆応募者の人柄と社風、上司、同僚等との相性

◆志望度

◆地頭の良さ

 

 

 

■キャリアの軸

採用担当者としては、応募者がどのような人生観・仕事観・キャリア観を持っているかを知ることで、自社の条件とのマッチ度・自社への志望度・入社後の短期離職確率・入社後に高いモチベーションで働けるか否かなどについて、推測することが可能になります。

 

 

■応募者の人柄と社風、上司、同僚等との相性

たしかに、企業は優秀な人材を欲してはいますが、特に法務職のポテンシャル選考においては、“優秀さ”が第一の採用指標となるケースは珍しく、むしろ、

 

「相応に優秀でありつつ、人として好感が持て、周囲から可愛がられる中で、すくすくと成長し、同僚や上司と良いチームを作りながら協働して行けそうな人」

 

こそが高く評価される傾向にあります。

そのため、採用担当者は、面接の場で、応募者の人柄と自社の社風とのマッチ度合い、一緒に働くことになる上司や同僚とのマッチ度合いなどをつぶさに確認しています。

 

 

■志望度

一見当たり前に聞こえるかもしれませんが、企業は原則として、内定を出したときに受諾して入社してくれる人に内定を出したいと考えています。内定を出したのに辞退されたのでは、そこまでにかけた労力・コストが無駄になってしまうからです。加えて、志望度の高い人材の方が、入社後により意欲的に仕事に取り組み成長してくれるという期待もあると思います。

こうした背景もあり、面接で高い評価を受ける上で、志望度の高さを示すことはとても重要になります。

 

 

■地頭の良さ

業務を遂行していく上で、一定以上の能力を備えているかは、採用担当者の一大関心事です。多くの場合、具体的には、

 

・話の説得力、わかりやすさ

・話の理解力の高さ

・イレギュラーな質問への対応力(少ない情報下でその場で思考する力)

・話しているときの雰囲気(話し方、レスポンス)

 

などから、採用担当者は、応募者の地頭の良し悪しを感覚的に判断しています。

 

 

 

面接に向けて行うべき準備

以上を踏まえて、法科大学院修了生が面接に向けて行うべき準備を解説して行きます。

 

■「キャリアの軸」を示すための準備

キャリアの軸を確認する質問としては、主に、➊過去の進路の分岐点で何を考え、何を基準に進路を選んだか、➋これからのキャリアの展望等(どんなビジネスパーソンになりたいか、何が出来るようになりたいかetc.)を問うものがあります。

 

➊過去の進路の分岐点に関する質問

具体的には、大学・学部を選んだ基準、学部時代に就職活動ではなく法曹への道を選んだ理由、法科大学院の選択基準、どのような法曹を目指していたか、なぜ法曹ではなく企業での就職を希望するのかといった質問になります。

昔の出来事を深掘りする質問も含まれることになりますが、法科大学院修了生の多くは過酷な司法試験受験に臨む中で、昔の記憶がだいぶ薄れている方も少なくないと思います。そのため、こうした質問に対し、どのように回答するかを事前にシミュレーションし、その過程で記憶を喚起しながら、「あの時、何があって、何を考えたか」等を整理しておく必要があります。

 

➋キャリアの展望に関する質問

[面接対策]10年後のビジョンの描き方でも取り上げましたが、キャリアの展望に関する質問は、多くの法科大学院修了生が特に苦手とするものです。企業で働くことのイメージを描けないままに、企業就職へと舵を切る方が少なくないことが主な理由だと考えています。

実際、法科大学院で勉強をしていると、「法曹になった方がどのような仕事をしているのか」という情報に触れる機会は多々あると思いますが、「法曹にならずに企業で働いている方がどのような仕事をしているのか」という情報に触れる機会はほとんどないと思います。その意味で、大多数の法科大学院修了生が、“企業で働くこと”のイメージを形作るための情報が圧倒的に不足している状況だと言えます。

 

そのため、まずは、企業で働いている方がどのようなやりがいを持ってどのような仕事をし、どのような点に仕事の難しさを感じているのかといった情報を得ることが、キャリアの展望を描くための第一歩になります。

特に、法科大学院修了生の多くが法務職での就職を希望していますので、そうであれば、法務担当者に関し、仕事のイメージを具体的にするための情報を取得し、「法務担当者に憧れる経験」をすることが必要になります。憧れた経験がなければ、「こんな法務担当者になりたい」という発言も嘘になるからです。

 

こうした観点から、法務担当者と交流できるイベントに参加してみる、法務担当者が執筆している記事を読む、法務の業務内容・最新動向等に関する情報を得る等して、法務の仕事に対して、本気で感情が動く経験(「やってみたい」、「かっこいい」、「つまらなそう」、「難しそうだけど憧れる」etc.)を繰り返すことが、法務としてのキャリア像を作りキャリアの展望を語る上で不可欠になるのではないでしょうか。

 

 

■自分自身の人柄・特徴をしっかりと伝えるための準備

応募者がどのような人柄の方なのかを探ることが、企業が面接を行うメインの目的の一つです。

人柄を知ることで、業務への適性、社風とのマッチ度合い、上司・同僚等との相性を探ることが可能になるためです。

 

そうしたこともあり、法科大学院修了生の多くが、求人票等に書かれている「求める人物像」の内容から、どのような人物像を示せば高評価になるのかを推測し、それに沿った印象を与えられるような面接アプローチを行っています。例えば、求人票に“リーダーシップ”が求められていれば、“リーダーシップ”があることを伺わせるエピソードを無理やり探し披露するといった具合です。

 

しかし、本来のご自身の強みでないものを強みであるかのようにアピールしたところで、採用のプロの目はごまかせませんし、かえって軽薄な印象を与えてしまう可能性すらあります。また、仮にごまかせて内定を獲得できたとしても、入社後に自分自身にないものを要求されミスマッチを感じて苦しむことになります。

そのため、「求める人物像」に流されず、どこの企業に応募する際も、ご自身の本来の強みを押し出して行く方が、選考上も入社後のミスマッチの防止という観点からも得策だと思います。

 

では、ご自身のお人柄・特徴を採用担当者にしっかりと伝えるために、どのような準備をしたらよいのでしょうか。

 

➊自分自身の強みを見出す

月並みなお話になりますが、まずは、ご自身の“強み”を見つけるところからだと思います。

そして、強みを見つける上で一番ヒントになるのは、ご友人や恋人、家族、先生などからかけられた『●●さんは、一見、~だけど、~なところがあるよね。』といった「誉め言葉」です。

まずは、過去に自分にかけられた誉め言葉を思い出してみる又は実際に周囲に自分の強みを聞いてみるところから始めてみるとよいのではないでしょうか。

また、自分では強みにならないと思っていた些細なことが、選考上“強み”と認められることも少なくありませんので、弊社のような人材紹介会社のキャリアアドバイザーを壁打ち役に、自己分析を進めて行くのも有効だと思います。

 

➋強みをアピールする上での裏付けを探す

ご自身の強みが見つかったら、その強みに対し説得力を持たせられるような裏付けを探す必要があります。もっとも、裏付けと言っても、裁判のように証拠品を提出するわけにはいきませんので、ここで言う裏付けとは、「複数の具体的なエピソード」になります。

 

そのため、裏付けとなる具体的なエピソードを出来る限り記憶喚起し、整理して簡潔に話せるよう準備をすることが大切になります。逆に、探しても裏付けとなる具体的なエピソードが見つからない場合には、面接の場で披露する“強み”としては適切でない可能性がありますので、別の“強み”を探す必要がありそうです。

 

➌引き出しとなる具体的なエピソード自体を増やす

ここまで、ご自身の強みをアピールするための準備について語って来ました。しかし、「自分自身の人柄・特徴をしっかりと伝える」という観点からは、面接の場で一つか二つの強みをアピールするだけでは、不十分です。

 

法科大学院修了生に対する採用担当者からの面接フィードバックで多いのが、『当たり障りのない教科書的な回答ばかりで、壁を作られているように感じる』というものです。

こうしたフィードバックは、「面接を通して、具体的なエピソードが少なく、優等生の模範解答のような抽象的な回答が多いため、本音で話してもらえている実感がなく、結局どういう人柄の方かが掴めなかった」という採用担当者側の不満を表しています。

 

本来、人は、[何かしらの出来事があり]、[その出来事に対して感情が働き]、[働いた感情を元に思考を開始し]、[行動に移す]という原理で生活しています。そして、多くの採用担当者が求める「具体的なエピソード」においては、この、「どんな出来事があって、それに対してどのように感じたのか、そしてどのような行動を取ったのか」という部分が中核となります

これに対し、多くの法科大学院修了生が、出来事・感情・行動の部分を省き、「どのように思考したか」のみを抜き出して回答しています。

それが上述の採用担当者が抱く不満の原因だと考えています。

 

それでは、こうした不満を採用担当者に抱かせず、「十分な自己開示をしてもらった」と満足してもらうにはどうしたらよいでしょうか。

 

やはり、単純に、面接の中で具体的なエピソードを披露する機会を増やすことだと思います。そして、そのためには、具体的なエピソードの引き出しを増やすことが肝要です。

面接での代表的な質問例が記載された市販の面接本を元に、「この質問に対しては、このエピソードを披露する」といった形でシミュレーションし、記憶喚起しながら、エピソードをExcel等に整理しておけば、具体的なエピソードの引き出しを増やすことに繋がりますし、さらに、法科大学院修了生の多くが苦手とするExcelの練習にもなると思います。

 

 

■志望度の高さを伝えるために

法科大学院修了生が応募するポテンシャル採用枠(現時点のスキル・経験よりもポテンシャルを重視して採用する枠)においては、皆さんが想像する以上に、“志望度の高さ”が選考を大きく左右します。

ここで言う“志望度の高さ”とは、「応募先企業に対する興味関心の強さ+興味関心の強さへの説得力」を指すとお考えいただいて良いと思います。つまり、応募先企業の事業・社風・業務内容等への興味関心の強さが伺え、しかも、興味関心が強いことに納得感があるときに、「自社への志望度が高い人材」という印象を与えることが出来るということになります。

 

それでは、どういった準備をすれば、採用担当者に対して、応募先企業への興味関心を示すことが出来るのでしょうか。

 

➊企業研究

まずは、応募先企業のどこに興味関心を抱いているのかを示せないことには始まらないと思います。そのために、世間の就活生は、面接前に「企業研究」を行っています。「企業研究」とは、

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◆応募先企業はどんな事業を行っているのか

◆応募先企業が属する業界がどのように変遷していくことが予想され、それに対してどのような手を打とうとしているのか

◆同業他社はどの会社で、そことの比較でどこが強みでどこが弱みなのか

◆現在どんな社風で、これから経営陣はどのような風土を作ろうとしているのか

◆入社後、どのような仕事を任せられるのか

 

 

こういった情報を収集する過程で、「面白い」、「立派だ」、「やりがいがある」、「共感できる」といった、心がときめく体験をし、その思いを言語化できるよう準備をすることに他なりません。具体的には、

 

・会社HP等で事業内容を確認し、事業内容を理解する上でわからない用語があれば調べる

・googleのニュース検索に応募先企業名を入れて検索して、最近の動向(力を入れている取り組み)を調べる

・「業界名+業界展望」というキーワードで検索して業界情報を仕入れる

・事業内容や商材名から同業他社を割り出し商材の特徴を比較する

・代表者名で検索して代表者のインタビューを探し、今後の事業展開や社風の理解に努める

・新卒向けの会社紹介ページの社員インタビュー等を見て社風を感じ取る

・求人票に記載された業務内容を理解する上でわからない用語があれば調べる

 

といった取り組みが有効になると思います。

 

 

➋企業選びの軸を確立する

先ほど、“志望度の高さ”とは、「応募先企業に対する興味関心の強さ+興味関心の強さへの説得力」だとご紹介しました。つまり、上述の企業研究を行っただけでは、「応募先企業に対する興味関心の強さ」を示すに留まり、「興味関心の強さへの説得力」を示せないため、志望度の高さを示す上で不十分ということになります。

 

そこで必要になるのが、“企業選びの軸”です。“企業選びの軸”とは、『どんな事業をやっていて、どんな社風で、どんな仕事を任せてもらえる企業に就職したいか』という基準軸になります。

 

「事業に関する軸」については、多数の企業の事業内容を見比べ、[関心あり]、[関心なし]、[どちらでもない]とタグ付けして行く中で、その共通項から見出すことが出来ると思いますし、「社風に関する軸」については、ご自身が過去に所属した組織(部活、アルバイト、ゼミetc.)を念頭に、どういった風土・雰囲気の組織に属したときに居心地の良さを感じたか、生き生きと活動できたかを思い出し整理することで見えてくるものがあると思います。「業務内容に関する軸」については、キャリアの軸のお話でも触れたように、法務の仕事のイメージを具体的にするための情報を取得し、「法務担当者に憧れる経験」を繰り返す中で、ご自身の興味関心がどこにあるのかが見えてくると思います。

 

そして、こうして、確立された“企業選びの軸”と、企業研究の結果、ご自身が関心を抱いたポイントの繋がりが明確になれば、「応募先企業に対する興味関心の強さ+興味関心の強さへの説得力」を示すことが出来ると思います。

 

 

■地頭の良い人材と評価されるために

面接においては、地頭の良し悪しが選考基準の一つになり、それは、面接でのやり取りにおける、「話の説得力、わかりやすさ」、「話の理解力の高さ」、「イレギュラーな質問への対応力」、「話しているときの雰囲気(話し方、レスポンス)」などで判断されるとお話しました。では、これらの要素はどのようにして磨けばよいのでしょうか。

 

“地頭”という言葉からは、先天的な要素が強いような響きが感じられますが、一定のトレーニング・経験を積むことで少なからず対策が可能だと思います。具体的には、

 

・情報格差のある聞き手に説明する機会を増やす

・自分が詳しくない事柄について、詳しい人から説明を聞く機会を増やす

・イレギュラーな質問をされる場に自らを置く

・出来るビジネスパーソンの話し方を聞く機会を得て、それを実践する場を持つ

 

こうした経験を積むことにより、「地頭が良さそうな人材」という印象を一定程度与えることが出来るようになると考えています。

そういった観点では、弊社でのインターンを通じて、企業からの電話を受ける経験・企業に営業電話をかける経験を積むのも有益だと思いますし、家電量販店でのアルバイトなども、説明力・イレギュラーな質問への対応力・未知の事項への理解力を鍛える上で打ってつけだと思います。

 

いずれにせよ、直前対策でどうにか出来る部分ではありませんので、就職活動と並行して、こうした就活力自体を高める活動を行うことをお薦めしております。

 

 

 

いかがでしたか。本日は、法科大学院修了生が面接までに行うべき準備についてご紹介しました。やるべきことは多いですが、急に面接に呼ばれたときに対応できるよう、日々少しずつ取り組んでみてください。

 

 

この記事を読まれた方は、ぜひ下記の記事も読んでみてください。

『法科大学院修了生に求められるコミュニケーション能力』

『法科大学院修了生のための面接前の緊張対策』

 

 

 

 

【筆者プロフィール】
齊藤 源久

法科大学院修了後、大型WEBメディアを運営するIT企業にて法務責任者、事業統括マネージャーを担当した後、行政書士事務所を開設。ビジネス法務顧問として、数十社のベンチャー企業の契約法務や新規事業周りの法務相談を担う。

2014年より、株式会社More-Selectionsの専務取締役に就任。前職での採用責任者の経験・長年の法務経験・司法試験受験経験などを生かし、法科大学院修了生の就職エージェント業務、企業の法務部に派遣する法科大学院修了生向けの法務実務研修の開発・実施などを担当している。

 

 

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