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就職ノウハウ

法科大学院修了生の選考と「筆記試験」

Q.企業の選考では、筆記試験が課せられると聞きましたが、どう対策したらよいでしょうか。

A.

多くの企業が選考時に課してくる「筆記試験」。“試験”というフレーズに敏感な法科大学院修了生の中には、この筆記試験を過度に警戒し、ストレスに感じている方も少なくありません。本日は、企業が課す筆記試験について解説して行きます。

 

 

企業が課す筆記試験の種類

企業が応募者に課す筆記試験には、大きく分けて以下の4つがあります。

 

 

➊能力検査

➋性格検査

➌法律試験

➍法務実務試験

 

 

➊能力検査

言語能力、数的処理、論理的思考力等、いわゆる地頭を計る試験になります。だいたい50%くらいの企業が選考時に課して来ます。

「SPI」が代表的な試験になりますが、世の中には様々な種類の能力検査があり、各社が個別にそれらを選択しますので、応募先企業がどの能力検査を採用するかは不透明です。

しかし、新卒向けの「SPI3」の問題集等を解いて事前準備をしておけば、ほとんどの能力検査に対応出来ると思います。

 

➋性格検査

日頃の行動選択や考え方などに関する多角的な質問に対して、「そう思う」、「どちらかと言えばそう思う」、「どちらかと言えばそう思わない」、「そう思わない」といった選択肢から直感的に回答して行く試験になります。回答内容から、応募者の人となりや仕事の適性、他の従業員との相性等を確認するための検査です。対策は基本的に不可能で、あれこれ裏を読んで恣意的に回答を行った場合には、回答内容の矛盾から「不誠実な回答を行う応募者」という評価に繋がるおそれがあるため、直感に任せて本音で回答するのが原則になります。

だいたい80%くらいの企業が選考時に課して来ます。

 

➌法律試験

ベースとなる法律知識を備えているかを確認するための試験になります。形式としては短答式がほとんどですが、稀に、自由記述方式(各問数行程度の回答)のケースもあります。出題範囲としては、民法の債権法分野や商法の企業法務(商人)関連の条文知識が問われることが多いですが、それほど難しい問題は出ない印象です。

だいたい5%くらいの企業が選考時に課して来ます。

 

➍法務実務試験

面接の場で、初見の契約書をレビューして問題点をディスカッションする、応募先企業の法務部に寄せられる法律相談事例をベースに「あなたならどう対応しますか?」という質問に口頭で回答する形式の試験になります。実務遂行能力、実務遂行センスなどを計られます。

応募先企業の業界・事業内容から、どのような種類の契約書を審査する機会が多そうかを事前に予測して、各契約書の肝となるチェックポイントなどを勉強しておくと対応しやすいと思います。また、応募先企業の業界・事業内容・取り扱い商材などから、どのような法律の規制を受けることが多いか、どのようなトラブル事例が多いかを事前に予測して、規制の内容、トラブルの種類とその際の対応などを予習しておくのも有効です。

だいたい、2%くらいの企業が選考時に課して来ます。

 

 

筆記試験が選考に占めるウェイト

もちろん、各社、バラつきはありますが、総じて筆記試験の成績のウェイトは低めな企業が多い印象です。実際、筆記試験の成績を理由に落選となるケースは、弊社の登録者全体で見ましても、1年間で5例ほどにとどまります。

また、他のライバルとの相対評価という観点では、司法試験では「1点」でも上回った方が勝つという形式でしたが、企業の選考における筆記試験では、「1点」の差で結果が左右されることは少なく、大きな差がつかない限りは、同じくらいの評価とみなされることが多いと思います。つまり、「だいたいこのくらいの実力」というアバウトな評価が下されるということになります。

そのため、付け焼刃の準備によって結果を左右させることは難しく、「積み重ねて来た“地力”をアバウトに評価される試験」ということが出来ます。

 

法科大学院修了生の中には、司法試験受験生時代の血が騒ぐのか、「➊能力検査や➌法律試験がある(又はあるかもしれない)」とわかった途端にナーバスになり、ソワソワし始める方がいますが、その段階でナーバスになってあがいても遅いですので、いつ、能力検査が課せられてもいいように、毎日、少しずつ、SPI対策や条文知識の復習を行って地力を緩やかに高めておく必要があります。

また、➍法務実務試験の対策まで手を回すのは、なかなか大変だと思いますが、実務に就いた後にも役立つスキルになりますので、出来る限り、面接前に上述の「法務の観点からの企業研究」を行うと、入社後の早期の成長に繋がりやすいと思います。

 

いかがでしたか。“筆記試験”というフレーズを聞くと、どうしても過度に身構えてしまいがちですが、今まで皆さんが受験して来た司法試験とは少し毛色が異なる試験になります。

まとめますと、「筆記試験はアバウトな地力を試される試験なので、日々少しずつ準備をしておこう。でも、そんなに恐れる必要はないよ。」ということになりますので、コツコツと良い準備をしつつ(コツコツと準備をして来なかった方は、いっそ開き直って)、リラックスして試験に臨んでみてください。

 

 

この記事を読まれた方は、ぜひ下記の記事も読んでみてください。

『法科大学院修了生の就職活動ロードマップ』

『法科大学院修了生が応募する「ポテンシャル採用枠」の選考基準』

 

 

 

 

【筆者プロフィール】
齊藤 源久

法科大学院修了後、大型WEBメディアを運営するIT企業にて法務責任者、事業統括マネージャーを担当した後、行政書士事務所を開設。ビジネス法務顧問として、数十社のベンチャー企業の契約法務や新規事業周りの法務相談を担う。

2014年より、株式会社More-Selectionsの専務取締役に就任。前職での採用責任者の経験・長年の法務経験・司法試験受験経験などを生かし、法科大学院修了生の就職エージェント業務、企業の法務部に派遣する法科大学院修了生向けの法務実務研修の開発・実施などを担当している。

 

 

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