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就職ノウハウ

法科大学院修了生向け法務求人と雇用形態

Q.法務求人における、正社員・契約社員・紹介予定派遣求人の違いを教えてください。

A.

「法科大学院修了生の応募が可能」と謳っている法務求人の中には、契約社員求人(嘱託社員求人)、紹介予定派遣求人など、正社員以外の雇用形態を想定した求人があります。

一方で、こうした雇用形態については「非正規雇用」と呼ばれ、ネガティブなイメージと共に語られることも少なくありません。

本記事では、法科大学院修了生向け法務求人における、正社員求人・契約社員求人・紹介予定派遣求人の具体的な違いについて解説していきます。

 

 

非正規雇用がネガティブなイメージと結びつく理由

上述のように、正社員以外の雇用形態、すなわち、非正規雇用に対して世間一般としてネガティブなイメージを抱く方は少なくありません。

 

 

非正規社員には、低賃金や不安定な雇用のほか、能力アップの機会が少ないなどの問題が挙げられます。

 

出典:明日の人事(貧困化につながりかねない「非正規雇用」実態や問題点は何か?)

 

 

 

20代の男性の正社員雇用が破壊され、非正規に置き換えられていったことは明らかです。そして、その状況から抜け出せずに、今、40代、50代になっている人たちがたくさんいるのです。そして、その苦難から自分自身に価値を見出せずに、ひきこもりになる人も少なくありません。

 

出典:MAG2NEWS(団塊世代の犠牲になった若者たち。非正規雇用が増えた本当の理由)

 

 

各所の議論をまとめますと、非正規雇用がネガティブに捉えられる主な理由は、(1)非正規雇用で経験を積んでも、なかなか正社員になれないこと、(2)待遇(給与等)が悪いことが多いこと、(3)雇用が不安定なことの3点です

では、実際のところ、法務の契約社員求人・紹介予定派遣求人においても、このようなネガティブな要素は存在するのでしょうか。

 

 

法務の契約社員求人

契約社員と正社員との法的な大きな違いは、無期雇用契約か有期雇用契約かという点です。すなわち、前者は期間の定めのない雇用契約であるため、厳しい解雇要件をクリアしない限り雇用者側から雇用契約を終了させられない一方、後者は、期間の定めのある雇用契約ということで、雇用者側は期間満了と共に雇用契約を終了させることができます。

このことは、当然、法務の契約社員求人においても当てはまります。そのため、法務の契約社員求人においても「(3)雇用が不安定」というネガティブな要素があることは否めません。もっとも、企業側が「契約社員」という雇用形態を選択する理由については、他の職種の契約社員求人と背景が異なるところがあります。

 

■一部企業が法務担当者を契約社員で採用する理由

では、法務担当者を契約社員で採用したいという企業の意図はどこにあるのでしょうか。一般的に、季節により必要な労働力の量が異なる職種において、ある種の調整弁として「契約社員」という雇用形態が選ばれることが多いのが実情です。しかし、法務担当者を契約社員で採用したい企業において、法務担当者を繁忙度合いにより増減させたいという意図を持っているところは非常に少ないのではないでしょうか。

法務担当者が担う業務の内容上、新たに入社した社員を教育するのにも相応のコストがかかりますし、企業のデリケートな情報にもタッチするポジションのため、社員の入れ替わりが激しいことは、情報管理上も決して望ましいものではありません。

企業が法務担当者を契約社員で採用したい理由として多く挙げられるのは以下になります。

 

 

➊社内ルール上、中途採用枠で人を採用するときには必ず契約社員からスタートさせるルールとなっているため

➋業界柄、社内に正社員がほとんどいないため

➌外資系企業ということで、社内に正社員がほとんどいないため

 

 

まず、➊の契約社員スタートの社内ルールについては、試用期間的な意味合いが強いものになります。正社員の試用期間中にも解雇自体は可能ですが、相応に厳格な要件があり、労務紛争に繋がるリスクをはらんでいます。そのため、企業としては、よりリスクを抑えた形で試用期間を設けられる契約社員という雇用形態を好んで用いる傾向にあります。一定の契約社員期間を経過後、問題なければ、高確率で正社員に登用されるパターンになります。

次に、➋の業界柄という点については、芸能界・音楽業界など、一定の業界において、「期間の定めのない雇用」という概念がマッチしづらい業界があり、そういった業界の慣習上、正社員が社内にほとんどおらず、法務担当者についても契約社員という雇用形態で採用するというパターンになります。

最後に、➌については、諸外国においては、解雇規制による保護+終身雇用を前提とした「日本式正社員」という概念がない国も相当数あり、それゆえ、正社員が社内にほとんどおらず、法務担当者についても契約社員という雇用形態で採用するというパターンになります。

 

■正社員との処遇の違い

では、法務求人において、正社員で採用された場合と契約社員で採用された場合とで、条件面等にどれほどの違いが生じるのでしょうか。弊社で取り扱った契約社員求人を見る限り、給与面で正社員登用時との差を設けている企業は約30%、差を設けている企業でも、その差は給与の5%ほどに設定しているところが最も多い状況です。賞与についても、約80%ほどの企業で正社員と変わらず支給されており、福利厚生面でも、退職金の支給の有無の面でこそ、明確な差を設けている企業が大半ではあるものの、その他の福利厚生面で正社員と明確な差を設けている企業は約20%と、条件面で大きな差を設けている企業は、それほど多くない印象です。

 

■契約社員を続けていたら契約社員から抜け出せない?

それでは、契約社員として法務経験を積んだ方は、その後に正社員として法務職で転職することは難しいのでしょうか。

実際、採用担当者の中には、「契約社員は正社員ほど責任を負って仕事をしていない」と断じて、契約社員としての法務経験を軽視する方が非常に稀ながらいますが、法務職においては、契約社員であっても責任と裁量をもって仕事をしているケースが多いため、大半の企業の採用担当者は、契約社員としての経験だからと割り引いて評価することはないようです。そのため、法務職として、契約社員から正社員に転職するハードルは決して高くなく、むしろ日常的なものとなっています。

 

■契約社員の雇用は不安定?

それでは、契約社員として法務を担当している方の雇用は不安定な傾向にあるのでしょうか?上述のように、他の職種と異なり、企業は業務量の変化に対応するための調整弁として「契約社員」という選択肢を採っているわけではなく、よりリスクの少ない試用期間の設定や慣習等を理由に「契約社員」という選択肢を採っているケースが圧倒的に多い状況です。そのため、基本的には継続しての雇用を前提に雇用契約を結んでいる企業が大多数のため、法務担当者において、期間満了を理由に雇用契約を終了されたというケースは少ない印象です。

期間満了による契約終了のリスク自体はゼロではないため、正社員と比べて、相対的に雇用が不安定なのは間違いありませんが、その度合いは、世間一般のイメージと比べてはるかに小さいものと言えます。

 

 

法務の紹介予定派遣求人

紹介予定派遣とは、正社員等の試用期間に相当する部分が応募先との雇用契約ではなく派遣元との雇用契約となる雇用形態になります。迎え入れる企業の側からしますと、応募者が正社員登用するのに見合わない人材と判断した場合に、派遣元企業との企業間の契約=派遣契約を終了させることで見送ることができますので、一層、労務紛争のリスクを抑えて試用期間を設定することができる点が最大のメリットです。法務の求人において「紹介予定派遣」という雇用形態が採られる理由も、基本的に、この『リスクの少ない試用期間の設定』という点にあるとお考えいただいてよいと思います。

ちなみに、紹介予定派遣で働ける期間の上限は法律上、6ヶ月と定められていて、企業側は6ヶ月以内に社員登用するか否かを決める必要があります。

 

■正社員との処遇の違い

そもそも、給与を支払い主体が、応募先企業ではなく派遣元の会社になります。また、月給制または年棒制が基本となる正社員と異なり、紹介予定派遣の期間中は、時給制となることが多いです。当然、法令にのっとり、社会保険等には加入しますが、各種福利厚生は受けられないことが多いと言えます。給与・福利厚生を総合的に考えたときに、どうしても、正社員登用時と比べて、条件面は少し劣る傾向にあります。

 

■紹介予定派遣で働いていたら派遣社員から抜け出せない?

紹介予定派遣は、そもそもの採用ニーズがあることを大前提に、より『リスクの少ない試用期間の設定』をしたいというニーズから採られる雇用形態になります。そのため、紹介予定派遣で働いた場合に、その後に社員登用される確率は低くないと言えます。実際、弊社の過去の実績上も、紹介予定派遣を入口に企業で就業した方の約80%が、6ヶ月以内に社員登用されております。

 

■紹介予定派遣という働き方は不安定?

紹介予定派遣の場合、1ヶ月~3ヶ月の期間の定めのある契約が締結されることが多いため、契約が更新されないリスク自体はどうしても残ります。その限りで、「紹介予定派遣は雇用が不安定」という言い方はできると思います。

 

■紹介予定派遣で働いたものの社員登用されなかった場合の選択肢

紹介予定派遣で働いたものの、最終的に社員登用されないケースもゼロではありません。しかし、その間に数ヶ月とは言え、実務経験を積んだ形になりますので、そこから再度、就職活動を行った場合、たいていの実務未経験の法科大学院修了生との競争に勝つことができます。そのため、紹介予定派遣を行う前には望めなかった選択肢も手に入れられるようになります。

実際、完全未経験の法科大学院修了生と6ヶ月以上の実務経験を積んだ法科大学院修了生との平均年収は50万円以上ちがうというデータもありますので、仮に社員登用が叶わなかった場合でも、紹介予定派遣を経験するメリットは小さくないと言えるのではないでしょうか。

 

 

まとめ

いかがでしたか?「法務担当者の求人」という特殊性からか、一般的な契約社員求人・紹介予定派遣求人と比べて、総じてリスクが低めなものが多いとご理解いただけたと思います。その一方で、「非正規雇用」という用語のネガティブなイメージに引っ張られて、法務の契約社員求人・紹介予定派遣求人に応募して来る方は、正社員求人に応募してくる方に比べて遥かに少ないのが実状です。

その分だけ、応募した場合のチャンスが大きい求人と言えますので、いち早く実務経験を積みたい方にとっては、メリットの小さくない選択肢になると思います。

弊社で抱える法務求人の9割以上は正社員求人ということもあり、正直、法務の契約社員求人・紹介予定派遣求人の数自体は多くありませんが、求人を見かけた際には、この記事をご参考に応募の有無を検討してみてください。

 

 

 

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『応募先企業の選定方法』

『地方求人の魅力』

 

 

 

 

【筆者プロフィール】
齊藤 源久

法科大学院修了後、大型WEBメディアを運営するIT企業にて法務責任者、事業統括マネージャーを担当した後、行政書士事務所を開設。ビジネス法務顧問として、数十社のベンチャー企業の契約法務や新規事業周りの法務相談を担う。

2014年より、株式会社More-Selectionsの専務取締役に就任。前職での採用責任者の経験・長年の法務経験・司法試験受験経験などを生かし、法科大学院修了生の就職エージェント業務、企業の法務部に派遣する法科大学院修了生向けの法務実務研修の開発・実施などを担当している。

 

 

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