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就職ノウハウ

法科大学院修了生が応募する「ポテンシャル採用枠」の選考基準

Q.【ブログ記事】“ポテンシャル採用枠”における採用基準

A.

就職活動を行う法科大学院修了生の中には、「そもそも、自分達はどういう基準で選考されているのだろうか?」という疑問を抱いている方が少なくないのではないでしょうか。

一般的に就職活動と言えば、「求人を探し、応募書類を書いて提出し、面接に赴き内定を獲得すること」というイメージがあり、それゆえに、いかに良い書類を作り、面接で流ちょうな受け答えをするかに成否がかかっていると考えられがちです。

しかし、私が最近読んだ<就活>廃止論という新卒の就職活動にフォーカスした書籍では、以下のように紹介されています。

 

 

 

いわゆる就職活動のイロハとされる自己分析とか、エントリーシートの作成とかいった具体的な活動を<ステップ1>とすれば、それを始める以前の「経験と学びによって人間としての力を高める」という段階が<ステップ0>である。

 

割り切った言い方をしてしまえば、実はいわゆる「就職活動」を始めようと思った時には、もうかなりの部分で勝負は決まっている。

 

出典:<就活>廃止論 By佐藤孝治(PHP新書)

 

 

 

綿密に自己分析を行う、応募書類作りに力を注ぐ、面接対策を行う以前のところ、すなわち、それまでの人生で経験と学びによって高めて来た「人間としての力」によって、就職活動の成否は左右されるというのです。

 

そして、この指摘は法科大学院修了生の就職支援を長年行って来た私の実感とも概ね合致します。

 

 

採用市場には、大きく分けて、①ポテンシャル採用市場と②経験者市場の2つがあります。

実務経験者が応募する②経験者市場においては、応募者のそれまでの業務経験を元に「何が出来るか」にフォーカスして選考が行われる一方で、法科大学院修了生が応募する①ポテンシャル採用市場においては、主に応募者のポテンシャル、すなわち「仕事が出来そうか」という点に着目して選考が行われることになります。

 

そして、「仕事が出来そうか」否かのインプレッションは、応募者がそれまでの人生経験と学びによって高めてきた力に左右されるところが大きいと言えます。具体的には、

 

 

・人間関係を構築する力

・情報格差のある相手に専門的な内容を説明する力

・未知の分野で一から何かを習得する力

・教えてくれる人から最大限のものを吸収する力

・相手の気持ち・立場・状況に配慮しながら気配りを行う力

・一つのことに粘り強く取り組む継続力

・失敗から学び改善する力

・答えのない問題に柔軟に対応する力

・自分で課題を見つけ自分で調べ自分で解決する力

 

 

などといったところになるでしょうか。

 

正直、ポテンシャル採用枠において、“学歴フィルター”(学歴を基準にふるいにかける)を設けている企業は少なくないと感じていますが、学歴が高いことで、継続力、吸収力等の面で「仕事が出来そう」というインプレッションに傾きやすいことが、企業が学歴フィルターを設ける一大要因となっていると考えられます。

その反面、学歴は高いものの勉強以外の人生経験の少ない応募者は、上記以外の力が乏しい印象を与えるため、評価がいまひとつ上がらない傾向にあるのも、また確かです。

逆に、学歴が高くなくてもバイト経験が豊富な応募者の評価が高まるケースがありますが、それは、気配り力、柔軟性の面で「仕事が出来そう」というインプレッションに傾きやすいことが理由として考えられます。

 

 

このように、法科大学院修了生が応募するポテンシャル採用枠においては、応募者がこれまでに積み上げて来た「地力」を基準に、「仕事が出来そうか」否かを判断され、選考が行われているとみてよいと思います。

 

現在の法科大学院修了生の就職市況を考えれば、「地力」があれば普通に就職活動を行えば数ヶ月でそれなりの就職先が見つかりますし、「地力」があることを書面・面接でわかりやすくアピール出来れば、一層、競争力が高まり、就職の選択肢が広がることになるでしょう。

逆に、シビアな物言いにはなりますが、「地力」がなければ、どれほど時間をかけても「地力」のある人に勝てる書面は書けず、どれほど面接対策をしても、「地力」のある人よりも「仕事が出来そう」という印象を与えることは出来ないと言えます。

 

 

その意味では、「地力」に自信のない人は、「地力」をつけ「地力」を上げることこそが就職する上での直接的な解決策となると言えるでしょう。

 

 

では、「地力」をつけるためには何をしたらよいのでしょうか。

 

アプローチ方法はいくつか考えられますが、一番即効性が高いのは『様々な仕事に触れる経験を積むこと』と考えています。

様々な仕事に触れ、トライ&エラーを重ねる中で、「仕事が出来るとはどういうことか?」という問いに向き合う機会が増え、それらの経験が言動・思考方法の変化をもたらし、最終的に「仕事が出来そう」というインプレッションに繋がると考えられるためです。

 

その観点では、様々なアルバイトを同時並行で掛け持ちするのも手ですし、様々な種類の仕事を課せられるマルチタスクなアルバイトを一つやり込んでみるのも手です。失敗が許容される環境で、ある程度教えてもらいながら仕事に触れたいという方には、弊社でのインターンシップという選択肢もありますし、「仕事が出来そう」というインプレッションに加えて「実務経験」という強力な武器も手に入れたい方には、法務派遣という選択肢もあります。

 

就職活動に苦戦している法科大学院修了生は、求人探し、応募書類作り、面接対策と共に、こうした「地力」を上げる活動にも、ぜひ精力的に取り組んでいただければと思います。

 

 

 

 

【筆者プロフィール】
齊藤 源久

法科大学院修了後、大型WEBメディアを運営するIT企業にて法務責任者、事業統括マネージャーを担当した後、行政書士事務所を開設。ビジネス法務顧問として、数十社のベンチャー企業の契約法務や新規事業周りの法務相談を担う。

2014年より、株式会社More-Selectionsの専務取締役に就任。前職での採用責任者の経験・長年の法務経験・司法試験受験経験などを生かし、法科大学院修了生の就職エージェント業務、企業の法務部に派遣する法科大学院修了生向けの法務実務研修の開発・実施などを担当している。

 

 

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